圧密沈下について解説

土質

 こんにちは、今回は粘性土の軟弱地盤の圧密沈下について解説しようと思います。圧密は粘性土のような透水性の低い地盤が道路盛土や擁壁による盛土などにより上載荷重を受け、粘性土内部の間隙水を長時間に渡り排水しながら、体積が減少していく現象です。その圧密によって一般に沈下が生じますがその沈下量を求める方法についてざっくりと解説したいと思います。道路などの土木関係の設計業務でもそうですが、家屋などの建築物でも盛土を行ってすぐその上に家を建てると同様の心配が起こると思います。

軟弱地盤とは

 まず、軟弱地盤とは「道路土工 軟弱地盤対策工指針」(以下、指針)によると「土工構造物の基礎地盤として十分な支持力を有しない地盤で、その上に盛土等の土工構造物を構築すると、すべり破壊、土工構造物の沈下、周辺地盤の変形、あるいは地震時に液状化が生じる可能性のある地盤」とのことです。この中で今回は土工構造物の沈下を扱うことにします。また、軟弱の程度ですが、構築される土工構造物の種類や規模等によっても、地盤に作用する荷重や許容される変位量が異なります。そのため必要とされる地盤強度や沈下特性も異なったものとなります。目安として一般に、N値4以下の地盤では沈下の恐れや安定に問題がある可能性があるようです。(「指針」P.4、P.6より引用)

沈下の種類の説明

 盛土を載荷した場合の軟弱地盤における沈下には、載荷後に比較的早期に終了する「即時沈下」と時間的な遅れを伴い長期間に渡り生じる「圧密沈下」があります。即時沈下は粘性土層のせん断に伴う変形によって発生する沈下とゆるい砂質土層の圧縮変形に伴う沈下になります。圧密沈下は一次圧密と二次圧密からなり基準時点以降では残留沈下量とも呼びます。残留沈下量は二次圧密を考慮しますが、値が小さい場合は無視してもよいものとされています。(「指針」P.120、P.137より引用)

 時間の遅れを伴う現象である圧密沈下のうち一次圧密は過剰間隙水圧の消散に伴う圧密であり、二次圧密は粘土骨粗の圧縮クリープに伴う圧密です。後者は一次圧密の終了時ころから認められ、その速度は極めて遅いものとなります。(「指針」P.114より引用)

 「残留沈下」とは沈下のうち工事完了後または供用開始後に生じるものになります。(「指針」P.4より引用)上記の基準時点がこれにあたるのだと思います。

一次圧密沈下量の算定

 一時圧密沈下量の算定を説明いたします。なお、「指針」P.55では「予備検討設階では盛土の載荷によって生じる地盤のせん断変形に伴う即時沈下及びゆるい砂層に生じる圧縮沈下を無視し、盛土中央下の軟弱土層の一次圧密沈下量のみを求めて全沈下量Sとしてよい。」と記載されいていますので、ざっくりと計算するにはここで説明する一次圧密沈下量の計算方法で検討すれば良いと思います。ちなみに、全沈下量の定義を示す説明が指針には何処にも記載が無いように思います。恐らく「全沈下量」は「即時沈下量+圧密沈下量」のことで良いと思います。  

一次圧密沈下量の算定式

 Sc:一次圧密沈下量(m)
 e0:圧密層の盛土前の鉛直応力P0での初期間隙比
 e1:圧密層の盛土荷重による圧密後の間隙比で、e-logP曲線に圧密層中央深度の盛土後の鉛直応力P0+ΔPに対応する間隙比
 H :圧密層の層厚(m)

検討条件および検討ケース

 今回検討する際の試算としての地盤条件および検討ケースは以下のようにいたします。

 ①盛土前の状態

 盛土前の鉛直応力P0=16.0× 1.25 = 20.0( kN/m2

 ②盛土ケース1(1mの盛土)

  盛土による増加応力ΔP=20.0 × 1.0 = 20.0( kN/m2

  圧密層中央深度の盛土後の鉛直応力P0+ΔP=20.0+20.0=40.0( kN/m2

 ③盛土ケース2(3mの盛土)

  盛土による増加応力ΔP=20.0 × 3.0 = 60.0( kN/m2

  圧密層中央深度の盛土後の鉛直応力P0+ΔP=20.0+60.0=80.0( kN/m2

    Wu:自然含水比(%)

    γ1:圧密層(軟弱粘性土層)の単位体積重量( kN/m3

    γ2:盛土の単位体積重量( kN/m3

 ※:盛土による鉛直応力の増加応力ΔPについては今回は試算として地盤と盛土が無限に広がるものと考え単純に「単位体積重量×盛土厚」としています。詳細設計では盛土は無限ではないため、盛土形状を考慮して求める方法を指針に記載されていますので、それにて行うのが良いと思います。

e-logP曲線

 「指針」P.50に予備検討で用いるe-logP曲線がありますので、それを用いて以下に示します。今回は指針に記載のうち必要な部分だけを表記させました。上記で求めた圧密圧力に対応する間隙比をそれぞれe0=1.238、e1=1.169、e2=1.117としました。なお、曲線からアナログ的に読みましたので、千分の一の単位までの正確さには自身がありませんが、大きく間違っていることはないと思っています。圧密層の自然含水比Wuを知っておく必要がありますね。

 詳細設計の場合では圧密試験を行ってe-logP曲線を作成し、同様に読み取ることになります。

検討結果

 今回設定した条件にて試算した結果以下のように、ケース1の1m盛土では一次圧密沈下量が7.7㎝で、ケース2の3m盛土では13.5㎝となりました。e-logP曲線の中でもかなり小さい間隙比の曲線を用いましたが、それなりに沈下する結果が得られました。これだけ沈下すれば十分に問題になりますね。

ケースe0e1(e2H(m)一次圧密沈下量Sc(cm)
ケース11.238e1=1.1692.57.7
ケース21.238e2=1.1172.5

試算結果

まとめ

 圧密沈下について解説と、圧密計算の基本として簡単な事例で計算しました。圧密の概略検討では、まずN値が4程度以下であるかを標準貫入試験かスウェーデン式サウンディング試験、あるいは簡易貫入試験により求めます。そしてそのような地盤があれば、資料を採取して自然含水比を求めれば圧密の概略検討を行うことができますね。詳細設計での検討では全ての地層について標準貫入試験を行い、圧密試験など必要な土質試験を行って検討を行うこととなりますね。計算も、現地盤や盛土形状が複雑であったりで増加応力の算定が複雑になることや圧密期間も算定するため専用のソフトで計算することが必要になると思います。

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