今回は令和5年10月6日に河川砂防技術基準(設計編)の部分改定された内容について紹介していきます。改定は「第4章 護岸・水制」です。一番最初は平成9年の出版ですが、それに対しての変化した部分をお伝えしようと思います。改定内容は国土交通省のホームページからPDFをダウンロードすることができます。下記にダウンロードサイトのリンクを貼ります。「改定文」と「技術資料」がありますが、「技術資料」をみていただければと思います。
改定内容は基本的には平成9年の内容を「適用上の位置づけ」として<考え方><必須><標準><推奨><例示>などに分けて記載しています。それぞれの意味は上記リンクの【統合版】に説明の記載があります。これによって、平成9年と今回改定版を見比べた場合に平成9年の内容が上記の位置づけごとに振り分けられたようになっています。したがいまして、ぱっと見ると、文章構成が変わったので、かなり内容が変わったように感じますが、基本的に概ね内容は同じで、追記されたイメージとなっています。
護岸と水制の統合
平成9年度版では「第4節 護岸」と「第5節 水制」がありましたが、令和5年版では「第4節 護岸・水制」となり第5節がなくなって番号飛びで第4節の次に「第6節 床止め」となっています。
追記内容1 工法選定を検討する際の流れ
追記としてページで言いますと「P.設計編 第1章 第4節ー4」があります。ここには護岸及び水制の工法の選定にあたって、必要な工法の最適な組み合わせの検討について記載されています。川幅や浸食耐力など、ケースによって「高水護岸」「低水護岸」「堤防護岸」「根固め工」と維持管理の容易性や経済性から「護岸」と「水制」の組合せなどです。また、これらの構造物組合せのみの設計では、洪水時の堤防の安全性の確保や良好な河川環境の保全、総合的な土砂管理等の観点から、十分に期待する効果が得られないことが想定される場合等には「河道計画や施設等の配置計画に立ち戻って、床止めによる河道の安定化の検討や、河道の平面形及び縦断形当の再設定により、再検討することが望ましい」とされているところです。また、次頁にはこの検討の流れについてフロー図で示されており分かりやすくまとめられて追記されています。
追記内容2 自然環境や景観への配慮
次にページで言いますと「P.設計編 第1章 第4節ー5」の下の文章~「P.設計編 第1章 第4節ー7」の中ほどまでには自然環境や景観への配慮の内容が追記されています。平成9年版でも触れていますが、明らかに追記となっています。内容としては、動植物の生息・生育・繁殖環境と多様な河川景観の保全・創出のためには護岸は極力設置しない方がよいが、護岸の設置が必要になった場合は、必要最小限となるよう検討するとされています。また、自然環境に配慮した護岸構造の例や、川幅が狭い中小河川での方法などが記載されています。ページが少し飛んで「P.設計編 第1章 第4節ー13」には護岸の明度やテクスチャーを持った素材を用いるなどの景観面への配慮事項について追記されています。
追記内容3 河床形状を抑制する機能を組み込んだ工法
追記内容1で示した護岸や水制では対応できない場合に河床形状を抑制する機能を組み込んだ工法として「ベーン工」「置換工」について「P.設計編 第1章 第4節ー8」に追記されています。
追記内容4 技術情報の共有化
文章量は少ないですが「P.設計編 第1章 第4節ー13」に災害情報から得られた知見を蓄積して計画、設計、維持管理のための技術情報として共有化することが追記されています。
追記内容5 設計の対象とする作用
設計の対象とする作用として「P.設計編 第1章 第4節ー15」に「必要に応じて考慮」するものに「航走波」「副振動(セイシュ)」「流砂・礫の衝突による摩耗・破損」「施工時荷重」が追記されています。
追記内容6 堤防護岸のり覆工の必要高さの理由説明
「堤防護岸(高水護岸)ののり覆工の高さは、原則として堤防天端までとする。」と記載があります。これは平成9年版も同じですが、その理由を新たに追記されています「P.設計編 第1章 第4節ー18」。ざっくり言うと、洪水時には風浪、うねり、跳水によって計画高水位より上の堤防法面が浸食する恐れがあるからとのことです。注意書きもあります。
追記内容7 基礎工の例に工法追加
基礎工の例として「P.設計編 第1章 第4節ー24」に示されていますが、令和5年版では「コンクリート矢板工」が追記されています。
追記内容8 天端工、天端保護工
天端工、天端保護工の考え方として「P.設計編 第1章 第4節ー29」の下の方に記載がありますが、護岸法肩部の線形や形状を工夫して法肩部と高水敷の境界線を曖昧にして景観面の工夫をすることが追記されています。
追記内容9 水制の詳細
水制について使用材料ですが「P.設計編 第1章 第4節ー33」の上の方に木材を用いる場合に水面付近の腐食性について追記されています。また、「P.設計編 第1章 第4節ー36」では「施工後の経緯を踏まえて改良することを基本とする。」とされています。「P.設計編 第1章 第4節ー37」の下の方では航路維持についての水制の考え方の文章量が増えています。「P.設計編 第1章 第4節ー38」では「景観の保全・創出のための水制」の項目が新しく追記されています。
追記内容10 挿絵の追加
これは見て一目なのでページは記載しませんが、「すり付け工」「水制(構造形式)」「水制(工種)」について挿絵が追記されて分かりやすくなっています。
まとめ
今回の改定にて、大きな追記は「追記内容1」の検討フローのところだと思います。全体として上記に変更された箇所が分かることを主として内容はざっくりと書きました。また、内容の詳細は本文を見ていただいた方が良いと思います。
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